飯豊連峰秋の大縦走 2014/9/27-29

「ほどほどの山遊び」に甘んじていた私もついに、飯豊縦走を決意しました。秋の3連休に決行です。プランはこうです。山形県小国町の飯豊山荘まで車を利用します。そこからは歩きで温身平。大嵓尾根を登り、飯豊本山、北股岳、門内岳と縦走し、梶川尾根を下ります。すると再び、飯豊山荘に戻ることができます。いいですねえ。テント泊2泊3日のプランとなります。成功の条件は、ずばり天気と体力です。まあ、とりあえず天気予報は晴れマークなのですが、体力、技量とも「ほどほど」の私にとっては大冒険。特に大嵓尾根は長く険く水場もない尾根です。ここをテントを担いで登り切れるか、考えただけでハラハラドキドキなのでありました。逆コースを辿るほうが無難では?と、助言される方もおりました。しかし、大嵓の取り付き個所の吊り橋はよく流されます。万が一、最後に橋がなかった時は尾根を登り返すことになりかねません。そんな恐ろしいことにだけはならないよう、安定した天気で、橋があるうちに渡ってしまうがよい。と判断し、登りに大嵓を選んだというわけです。(臆病なのか?おい、体力ダイジョブか?)

吊り橋を渡り終えて時計は午前8時を回ってしまいました。自宅から車で飯豊山荘までは2時間30分です。そこから登山口の温身平まで徒歩30分、吊り橋までさらに40分、そう、もう少し早く出ればよかったのです。とはいえ、天気がもう素晴らしく、抜けるような青空に見事な紅葉が映えます。大嵓の急登なんのその。私はどんどんどんどん高度を稼いでいきました。水は1ℓ、荷物は装備を極限まで削って10kgに抑えています。軽いのです。だから喉はそれほど乾かず、大汗もかきません。疲れる前に、カメラや双眼鏡を取り出して一息入れて遊び遊び、登っていきました。吊り橋から3時間で千本峰到着。さすが、山遊び人です。

行動食のミックスナッツをかじりながら歩き、長い休息は取りませんでした。水はまだあります。が、鋭鋒宝珠山を捉えた時に時計は午後2時となりました。コースタイムを縮められませんでした。はい、ここでタイムオーバー。現在「ほどほどの山遊び」のルールでは、2時以降は行動しないと決めています。ただ、この縦走は2014年ですから、この縛りはありませんでした。それに、こんな岩だらけの場所でビバークしてはいけません。飯豊本山テントサイトまであと2時間の行程ですから、歩くという選択のみです。天候にも恵まれているのですからがんばりましょう。

ところがです。私の両足君が突如、「もう、やってらんねえ!」と、ストライキを起こしてしまいました。そして、ふくらはぎ、すね、内もも、外もも、伸ばす筋肉も曲げる筋肉もぜーんぶ突っ張らかって、ただの棒切れのようになってしまいました。すんごく痛みます。致し方なく、しばし呆然と足を投げ出し休憩です。ややしばらくすると、5分休むと5分歩けるようになり、進むことができましたが、テントサイトについたのは日没間際の5時30分となってしまいました。ま、ギリギリセーフ。


広がる絶景を前に深く反省しました。要するに一番大切な自分の仲間、両足君を酷使して使い、愛想をつかされ反乱に至ってしまったのですね。これからはもう無茶はできません。今後「午後2時以降ハ、筋力酷使を完全に完了スルコトトス」と唱えるのでした。

朝になると、景色はくっきりと眼前に浮かび上がりました。縦走開始です。御西岳まで平坦な道です。昨日の難行苦行が悪夢のようです。さて、飯豊本山と御西岳の間にはいくつもの雪田があり、越年します。雪田が小さくなると、雪窪地形(あるいは雪蝕カール地形)をまじまじと見ることができます。「それが何なんだ!」と思われる方、ごめんなさい。私はこれを観察するのが好きなんです。

「凍結破砕作用と,融雪水・ジェリフラクションによる破砕物質の除去によって,残雪の周囲では浸食が進み,雪窪(ゆきくぼ)snow niche,nivation hollowとよばれる浅い凹地が発達する。これが残雪の存在によってもたらされる雪食作用である。」(世界大百科事典)とあります。植生も貧弱にならざるを得ず,ますます窪んでいくのでしょう。それにしても、この時期の雪田の周囲は新緑から紅葉までグラデーションがかかり、彩が豊かですね。あと2週間もすれば初冠雪になります。山はじっとしていてくれません。

雪田の周りは常に若葉が芽吹きます。これをツキノワグマが食べます。2020年、御西小屋から数百メートル北上したあたりでクマと登山者が遭遇する事故が発生、目撃事案も複数ありました。遭遇した方はストックで応戦し、クマは山形側から新潟側へ遁走。撃退できたと聞き、私のストックは普段はザックに1本仕舞っているのですが、はい、手に持つようにしました。無邪気なクマさんが怖いのです。


地獄のような大嵓尾根でした。しかし、一旦主脈に到達してしまえば、尾根を緩やかに登り下りしながら原始の景観を味わえるのが飯豊の良さ。最高です。飯豊の尾根は朝日よりどっしりと太く、神室の尾根は朝日より細く東北一の痩せ尾根と言われています。(ほとんど県内の山しか登ってない私には、誰が言ったかは知りません。)どの山も違いますけど、それぞれ、いいところであります。


通過してきた本山小屋、御西小屋も多くの方の尽力で清潔に保たれています。が、梅花皮小屋はさらにきれいです。山形県で設置している小屋ですからか身内びいきになるのかもしれませんが、水場も近くて豊富なロケーションの良さも抜群で梅花皮小屋は連峰随一でしょう。なので、テント泊にはこだわらず泊まって縦走の疲れを癒すことにしましょう。(かなり疲れてますね。)奮発してビールなんかも買っちゃいましょう。飯豊は信仰登山で栄え、本山周辺ではよく古銭を目にします。山にお金を備える信仰心は理解できますが、私はビールの担ぎ上げに尽力している人に直接お金を手渡したいです。(飲みたいだけ。)



今回の縦走登山も終わりに近づいてきました。秋の終わりに3日間の晴天に恵まれることなど、私の人生ではもうないかもしれません。一歩一歩普通に歩けることに感謝です。両足君だけでなく、心臓君や胃袋君も無言で協力してくれました。また、一人ぼっちで山遊びしましたが、両足君や心臓君、胃袋君こんな仲間がいることをうれしく思うわけです。


梶川尾根まで到達しました。ぐんぐん高度を下げて着陸態勢に入ります。途中、滝見場という場所から梅花皮大滝や石転び雪渓を見ることができました。「ああ、いがった。今度は杁差岳まで行ってみようかな。来年になるかもしれないけど・・・。」人生に分かりやすい目標があるとメンタルの健康に計り知れない貢献をするのだと、私は経験上知ってます。

いやはやよかった。ああ、よかった。と言いながら、ほどほどからはややはみ出てしまった大冒険、自分にとってはグレートアドベンチャーだったけど幕は降りるのでありました。




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